「県大会に出たチームと、出られなかったチーム。一緒に練習させて大丈夫かな…」
合同レッスンの前日、正直そういう心配がありました。
レベルの差があると、できる子が退屈する。できない子が萎縮する。そういう状況を見てきたことがあったから。
でも、その日起きたことは、ぼくの予想を大きく超えていました。
最初の30分、明らかな「差」があった
レッスンが始まってすぐ、子どもたちの「差」は目に見えてわかりました。
県大会出場チームの子たちは、動きにキレがある。声が出る。ミスしても次の動作にすぐ移れる。
一方、出場できなかったチームの子たちは、動きが少し重い。ミスをするとそこで止まってしまう。俯いて、なかなか顔が上がらない子もいました。
技術の差というよりも、「心の状態」の差という感じでした。
ぼくは少し考えました。この状況で何をすれば、全員にとって意味のあるレッスンになるか。
チームを「混ぜた」
練習の途中で、ぼくは決断しました。
3チームの子どもたちを、チームに関係なくシャッフルして、グループを組み直したんです。
「チームをバラバラにする」というのは、指導者にとっては少し勇気がいる判断です。チーム同士のまとまりを壊してしまうかもしれない。子どもが混乱するかもしれない。
でも、やってみてよかったと心から思います。
「仲間の強度」が子どもを変えた
グループを混ぜて練習を再開した途端、変化が起き始めました。
出場できなかったチームの子たちが、隣でプレーしている出場チームの子の動きを見て、自然と動きが変わっていったんです。
声が出るようになった。足が動くようになった。ミスをしても、すぐ次のプレーに切り替えられるようになった。
ぼくが「声を出せ」「足を動かせ」と言ったわけじゃない。周りの仲間の動きを見て、自分からそうなっていったんです。
いちばん大きな変化は、「ミスのあとに諦めなくなった」ことでした。
隣で出場チームの子がエラーしても、すぐ立ち上がってプレーを続けている。その姿を見て、「あ、ミスしても続けていいんだ」という感覚が自然と広がっていきました。
才能より「環境」が子どもを育てる
このとき、ぼくが改めて感じたことがあります。
子どもの成長は、才能よりも「環境」によって決まる部分がとても大きいということです。
「うちの子は才能がない」「センスがない」と感じている親御さんに、ぼくはよく言います。
「その子は今、どんな環境に置かれていますか?」
一緒にいる仲間のレベル、練習の雰囲気、声かけのされ方、失敗したときの周囲の反応——これらが子どもの「基準値」を決めます。
出場できなかったチームの子たちが変われたのは、彼らに「才能がなかった」からじゃない。これまで「変わるための環境」がなかっただけなんです。
親御さんにできること
もし今、お子さんが「うまくいかない」「成長が止まった気がする」と感じているなら、まず「環境」を見直してみてください。
一緒に練習する仲間は?声かけをしてくれる大人は?失敗したとき、どんな空気が流れている?
子どもは環境に敏感です。「努力が自然と流れ出す環境」さえあれば、子どもは勝手に成長していきます。
その環境を作ることが、コーチの、そして親御さんの一番大切な仕事だとぼくは思っています。
まとめ
あの日のレッスンで、「才能の限界」はなかった。あったのは「環境の差」だけでした。
子どもはいつでも変われます。環境が整えば、あとは子どもが自分で成長していきます。
今いる環境を少し変えるだけで、子どもの表情はガラッと変わることがある——それを、ぼくはこの目で見ました。
うえちコーチについて
元甲子園球児(犠打9・大会記録保持)/内野守備パーソナルコーチ・スポーツメンタルトレーナー/現役消防士・3児のパパ。100人以上の選手と向き合ってきた現場経験から「すぐに実践できて、今日から変わる1つ」をお届けします。