「練習ではできるのに、なぜ試合になるとエラーするのか」
こんにちは、上地俊樹です。消防士をしながら、少年野球の守備コーチとして多くの子どもたちと関わってきました。その中で、保護者の方から一番多く相談を受けるのが「うちの子、練習ではあんなに上手に捕れるのに、試合になるとエラーばかりなんです。なんでなんでしょうか?」という悩みです。
結論からお伝えします。これは技術不足ではありません。「思考の違い」によって起こる現象なのです。同じゴロでも、練習と試合では子どもの脳の中で全く違う処理が行われています。ここを理解しないまま「もっと練習しろ」と言っても、状況はなかなか変わりません。
脳には「自動モード」と「手動モード」がある
人間の脳には、ざっくり言うと2つの動作モードがあります。練習で慣れ親しんだ動きを無意識に行える「自動モード」と、状況を考えながら一つ一つ判断する「手動モード」です。
練習のノックでは、子どもは自動モードでプレーしています。打球が飛んでくる場所、強さ、タイミングがある程度予測できるからです。ところが試合になると、相手打者、走者、点差、回、自分のポジショニング……たくさんの情報が一気に流れ込み、脳は手動モードに切り替わってしまいます。手動モードに入った瞬間、動きはぎこちなくなり、判断が0.数秒遅れるのです。
試合でよく起こる「3つの遅れ」
私が現場で見てきて、試合でエラーする子に共通している遅れが3つあります。
- 判断の遅れ:打球が飛んできてから「前?後ろ?」と考え始める
- 動き出しの遅れ:投手が投げる前に重心が決まっていない
- 視野の遅れ:打者ではなく、自分の足元やグラブを見てしまう
この3つはどれも「準備の質」で大きく変わります。実力を試合で出せる子は、ボールが来る前にすでに動き始める準備が終わっているのです。
試合で実力を出す子の「準備習慣」
あるチームで、いつもキラリと光るプレーを見せる小6の内野手がいました。彼に「何を考えてプレーしているの?」と聞くと、こう答えました。「投手が振りかぶる前にバッターの構えを見て、引っ張りそうかどうか想像してます」。これは指導された型ではなく、彼が自分の頭で組み立てた習慣でした。
つまり、試合で力を出す選手は、投球の前にすでに「予測」を終わらせているのです。打球が飛んできてから考えるのではなく、飛ぶ前にイメージしている。だから一歩目が早く、結果としてエラーが減ります。
今日からできる「試合脳」を鍛える練習3つ
1. 打者観察ドリル
ノックの前に、わざと「右打ち・左打ち」「引っ張り・流し打ち」と声をかけ、それを想像してから打球を出します。子どもが「予測する習慣」を身につけるための入口になります。
2. 一連の流れでのキャッチ練習
捕る→投げる、を切り離さず、必ずワンセットで行います。試合では「捕ったら終わり」ではないからです。送球まで含めて完結させる感覚を身体に染み込ませます。
3. 強度を変えたバッティング練習
同じ強さの打球ばかりでは、試合のランダム性に対応できません。緩い打球、強い打球、イレギュラーをわざと混ぜることで、判断のスピードが鍛えられます。
親御さんへ、声かけを少しだけシフトしてみてください
試合でエラーした子に「練習ではできるのに!」は禁句に近い言葉です。子どもからすれば、頭の中で起こっている処理の違いを説明できないため、ただ自信を失う結果になってしまいます。
そのかわり、「次のバッターはどんな打球が来そう?」と一緒に予測してあげてください。子どもの脳が「考えるモード」から「予測するモード」に切り替わります。これだけで、次の打球への一歩目が驚くほど変わってきますよ。今日からぜひ、お子さんと一緒に試してみてください。
うえちコーチについて
元甲子園球児(犠打9・大会記録保持)/内野守備パーソナルコーチ・スポーツメンタルトレーナー/現役消防士・3児のパパ。100人以上の選手と向き合ってきた現場経験から「すぐに実践できて、今日から変わる1つ」をお届けします。