メンタル守備・技術

練習ではできるのに、試合でエラーしてしまう子の話

「コーチ、練習ではできるんです。でも試合になると…」

そう打ち明けてくれた小学6年生の子がいました。

ぼくもコーチをやっていて、この「練習ではできるのに試合でミスする」という問題は、技術的な問題の中で一番多く、そして一番難しい問題のひとつだと思っています。

なぜなら、これは技術の話ではないからです。

試合でエラーする子に共通していたこと

その子の守備を練習中に見ると、動きは悪くない。フットワークも普通にできている。「なぜ試合でミスするんだろう」と不思議に思うくらいでした。

でも試合の映像を見返したとき、違いが見えてきました。

体が固まっているんです。

姿勢が上がって、最初のステップが遅い。そしてボールが来る前から、すでに体に力が入っている。

本人に聞いてみると、試合中にこういうことを考えていると言いました。

「エラーしたらどうしよう」「チームに迷惑かけたくない」「ミスしたらまた怒られるかも」

これが問題の本質でした。

「未来の失敗」に意識が飛んでいる

人間の脳は、不安になると「今この瞬間」ではなく「まだ起きていない未来」に意識が向いてしまいます。

「エラーしたら怒られる」という考えが頭にあると、ボールを見ている目の前の現実ではなく、エラーした後の場面を心の中でイメージしてしまう。その瞬間、体から「今ここ」への集中力が抜けていくんです。

消防士の世界でも同じことが起きます。現場に入る前に「うまくできなかったら」と考え始めると、体が固まって判断が遅くなる。だから訓練では徹底的に「目の前のことだけに集中する」習慣を作ります。

やったこと

ぼくがその子にやったのは、シンプルなことです。

「ゴロが来たら、足を動かすことだけを考えろ」

これだけ。

「捕れるかどうか」じゃない。「エラーしたらどうなるか」でもない。ただ「足を動かすこと」だけに意識を向ける。

最初は「それだけでいいの?」という顔をしていました。でも繰り返す中で、体が自然に動き始めた。

次に試合状況をシミュレートした練習を取り入れました。「スコア1点差、2アウト満塁」という状況を作って、その場でゴロを打つ。プレッシャーをかけながら「足を動かすことだけ」に集中する練習です。

最初はやはり体が固まっていましたが、繰り返すうちに「プレッシャーがあっても足が動く」感覚を体得していきました。

技術より先に「思考の癖」を変える

この経験で改めて感じたのは、技術練習の前に「思考の癖」を変えることが大事だということです。

「エラーしたらどうしよう」という思考パターンは、一朝一夕では変わりません。でも、練習の中で意識的に「今ここに集中する」経験を積み重ねることで、少しずつ変わっていきます。

親御さんができることとして、試合のあとに「今日よく足が動いてたね」「一歩目が早かったね」という、動作そのものを具体的に褒めることが有効です。

「よく頑張ったね」「ナイスプレー」より、「あのゴロの一歩目、すごく早かった」の方が、子どもの「今ここに集中する」という感覚を強化できます。

まとめ

練習ではできるのに試合でエラーする——これは技術不足ではなく、意識の向き先の問題です。

「エラーしたら」という未来への不安ではなく、「今、足を動かす」という現在への集中。この切り替えができるようになると、試合でのパフォーマンスは大きく変わります。

もしお子さんがこのパターンで悩んでいるなら、技術練習に加えて「思考の練習」も取り入れてみてください。

うえちコーチについて

元甲子園球児(犠打9・大会記録保持)/内野守備パーソナルコーチ・スポーツメンタルトレーナー/現役消防士・3児のパパ。100人以上の選手と向き合ってきた現場経験から「すぐに実践できて、今日から変わる1つ」をお届けします。

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