先日のレッスンが終わったとき、子どもたちが言ってくれました。
「楽しかった!」「もっとやりたかった!」
正直、これが一番うれしい言葉です。
技術的に上達した、という報告ももちろんうれしい。でも「楽しかった」という言葉には、それ以上の意味があると思っています。
「楽しい」が成長のスイッチになる
「楽しい」という感覚は、成長の原点です。
子どもは楽しいと感じると、外から「やりなさい」と言われなくても没頭します。練習が終わっても「もっとやりたい」という気持ちが自然に出てくる。
「楽しいからやる」という状態になると、吸収のスピードが全然違います。同じ練習でも、「やらされている」子と「楽しんでいる」子では、上達の速さが大きく変わります。
脳科学的にも、楽しいと感じているときは脳が活発に働いて、記憶への定着率が上がると言われています。「楽しかった練習の動き」は、体に染み込みやすい。
「完璧じゃなくてもいい」という感覚
この日のレッスンで印象的だったのは、子どもたちがミスをしながらも、その後の切り替えが早かったことです。
エラーしても「あ〜!」と言いながらすぐに次の準備をする。捕れなかったボールに悔しそうにしながらも、目が輝いている。
「完璧じゃなくてもいい」という感覚が、自然と生まれていました。
ミスをしてもすぐ切り替えられる子は、成長が早い。なぜなら、ミスを「終わり」ではなく「次への情報」として扱えるからです。
「楽しい」という感覚が土台にあるから、ミスをしても「もう一回やってみたい」と思える。失敗を恐れるより、「次はどうしよう」という好奇心が勝っている。
「楽しい」は「ゆるい」とは違う
誤解してほしくないことがあります。
「楽しくやろう」というのは、「ゆるくやっていい」ということではありません。
子どもたちに「今日いちばんいい動きをしよう」「この1球、本気でやってみよう」と声をかけると、目の輝きが変わります。楽しみながら、本気になる——この両立ができるのが、一番成長する状態です。
ゆるいだけの練習では、子どもの心に火はつきません。でも楽しさがない厳しさは、ただの苦しさになります。
楽しいから本気になれる。本気だから成長できる。このサイクルを作ることが、指導者としてぼくが一番大切にしていることです。
ぼくが「上達」の基準にしていること
技術の向上は、数字で測れます。捕球率、送球の精度、反応速度——こういった指標で「上達したかどうか」を測ることができます。
でも、ぼくがレッスンの終わりに一番大切にしている評価基準は別のところにあります。
「レッスンが終わったとき、子どもたちの目がどんな状態か」です。
「やり遂げた」という充実感のある目をしているか。「もっとやりたかった」という前のめりな気持ちが残っているか。
この2つが見えたとき、「今日のレッスンはよかった」と感じます。
技術は積み重ねで上がっていきます。でも「野球が楽しい」という気持ちは、壊れると戻るのに時間がかかります。だからこそ、楽しさを守ることをぼくは大切にしています。
親御さんへ
子どもが「今日、楽しかった」と言ったら、ただ聞いてあげてください。
「何が楽しかった?」「どの場面がよかった?」と少し深めてみるのもいいです。
「楽しかった」という気持ちを言葉にする練習が、子どもの「野球が好き」という気持ちをさらに強くします。
そして、楽しかったレッスンの翌日は、自主練に自分から向かう子が多い。「楽しかった」という感覚が、次への動機を作るんです。
まとめ
「楽しい」という言葉は、成長の合図です。
楽しさがあるから本気になれる。本気になれるから伸びる。楽しさのない努力は続かない。
技術を上げることと同じくらい、「楽しんで野球に取り組める状態」を守ることが大事だとぼくは信じています。
「楽しかった!」——その一言を大切にしてあげてください。
うえちコーチについて
元甲子園球児(犠打9・大会記録保持)/内野守備パーソナルコーチ・スポーツメンタルトレーナー/現役消防士・3児のパパ。100人以上の選手と向き合ってきた現場経験から「すぐに実践できて、今日から変わる1つ」をお届けします。