少年野球の現場に立ち続けて、ぼくがずっと感じてきたことがあります。
子どもたちはみんな「勝ちたい」と思っている。同時に「楽しみたい」とも思っている。この2つの気持ちは矛盾しているように見えて、実は共存できるはずのものです。
でも、現場ではこの2つがぶつかることが少なくない。
「勝ちを求めること」は悪くない
まず前置きとして言わせてください。勝利を目指すことは、悪いことではありません。
チームが勝利を目指して練習する。その過程で子どもたちは努力を覚え、チームワークを学び、諦めない心を育てる。勝負の世界に触れることで得られるものは、計り知れないほど大きい。
コーチや監督が「勝ちたい」と思うのも、「子どもたちに勝利の喜びを経験させたい」という純粋な気持ちからきています。
ぼくも現役時代、甲子園で勝ちたいと心から願っていました。その気持ちが、毎日の過酷な練習を続ける原動力だった。
でも、何かが違う気がする瞬間
グラウンドに立っていると、時々「何かが違う」と感じる瞬間があります。
ミスをして下を向いたまま、次のプレーに切り替えられない子。叱られて、目の輝きが消えていく子。勝てないと「野球やめたい」と言い始める子。
技術は少しずつ上手くなっているのに、なぜかグラウンドに来る足が重くなっている子。
こういう場面を見るたびに、「何かのバランスが崩れている」と感じます。
小学生時代は「7:3」で関わる
ぼくがコーチとして大切にしているのが、小学生時代の「人間育成7:勝利3」という考え方です。
勝利を3割大切にする。でも7割は「人間育成」に使う。
「人間育成」に含まれるのはこういうことです。
逆境から立ち直る力。 ミスをしても、負けても、また立ち上がれる。この力は野球をやめた後も、社会に出てからも必ず使います。
チームワーク。 自分のことだけでなく、仲間のことを考えて動ける。「チームのために動く」という経験は、社会に出てから人間関係の土台になります。
自分で考える力。 コーチに言われた通りに動くだけでなく、「なぜそうするのか」「次はどうすればいいか」を自分で考えられる子に育てたい。
野球を愛し続ける心。 中学、高校、そして大人になっても野球を続けてほしい。そのためには、小学生の時期に「野球って楽しい」という記憶を積み重ねることが大事です。
勝利だけを追いすぎると起きること
試合に勝つことだけを優先した指導が続くと、子どもたちに何が起きるか。
ぼくが見てきた中で感じるのは、こういうことです。
失敗を恐れるようになる。 ミスをしたら叱られる経験が重なると、「チャレンジするよりも安全に動く」方向に思考が向く。思い切ったプレーが消えていく。
自分で判断する力が育たない。 「コーチに言われた通りにやればいい」という考え方が強くなりすぎると、自分で考えて動く場面で固まってしまう。
野球が好きでなくなる。 「楽しいからやる」ではなく「叱られないためにやる」という動機になっていくと、中学で野球をやめる子が増えます。
「楽しむ」と「本気になる」は両立できる
ぼくが伝えたいのは、「勝利を目指すな」ということではありません。
楽しみながら本気になる、その両立ができるということです。
子どもたちが「もっとうまくなりたい」と自分から思う状態を作ること。それが、長期的に見た最も効果的な育て方だとぼくは信じています。
ミスをしても「次は捕ってやる」と思える心。負けても「次は勝てるように練習しよう」と思える心。この心を育てることが、コーチとして一番大事な仕事だと感じています。
まとめ
勝ちを求めることと、野球を楽しむことは、本来対立しない。
でも、勝利への圧力が強くなりすぎたとき、子どもたちの「楽しむ力」が削られていく。
小学生の時期だからこそ、7割は人間育成に。勝利だけでなく、「野球が大好きな子」を育てることを大切にしてほしいと思います。
うえちコーチについて
元甲子園球児(犠打9・大会記録保持)/内野守備パーソナルコーチ・スポーツメンタルトレーナー/現役消防士・3児のパパ。100人以上の選手と向き合ってきた現場経験から「すぐに実践できて、今日から変わる1つ」をお届けします。