試合が終わった直後、子どもはどんな状態にあるか。
ぼくは「心が最も揺れている時間」だと思っています。
うまくいった試合なら興奮で心が高ぶっている。うまくいかなかった試合なら悔しさや悲しさで心が揺れている。どちらの場合も、子どもの心はいつもより繊細な状態にあります。
だからこそ、試合直後の声かけが、次の試合のパフォーマンスを大きく左右するんです。
ついやってしまう声かけ
試合後に親御さんがついしてしまう声かけのパターンがあります。
「ドンマイ、次があるよ」「あのプレー、もう少し前に出れたんじゃないかな」「今日は仕方ないよ、次は頑張れ」
これらは悪意がない、むしろ善意の言葉です。でも子どもの耳には、こう聞こえてしまうことがあります。
「今日はダメだった」「もっとできたはずなのに」「次こそちゃんとやれよ」
子どもはまだ感情の処理が未熟です。言葉の表面より、言葉の「温度」を先に感じ取ります。焦りを含んだ励ましは、子どもには「叱責」として届くことがある。
では、試合後に何をすればいいか。ぼくが実践している4つのポイントをお伝えします。
① まず「プロセス」を認める
試合の結果ではなく、取り組んできたプロセスを最初に認めてください。
「今日、よく頑張ったね」「最後まで集中してたの、見てたよ」
「頑張ったね」は漠然と聞こえるかもしれませんが、「見てたよ」という言葉が加わることで子どもに届き方が変わります。「パパはちゃんと見ていてくれた」という安心感が生まれます。
この安心感が、次の言葉を受け取る土台になります。
② よかった動きを1つ、具体的に伝える
「よかったね」という言葉より、具体的な動きを伝える方が子どもの自己効力感を育てます。
「あの3回表、ランナーいる場面でのポジショニング、よかったよ」「ファーストステップ、一歩出るのが早くなったね」「ミスしたあとに、声出してたの見てた」
結果ではなくプロセス。「何をうまくやれたか」を具体的に言葉にしてあげることで、子どもは「自分のどこがよかったのか」を意識できるようになります。
これを積み重ねることで、子どもは自分の「強み」を自覚し始めます。
③ ミスの振り返りは子どもから
試合でミスをした場面について、こちらから「あのプレー、なんで捕れなかったの?」と聞くのは避けましょう。
子どもが自分から「あのゴロ、最初の一歩が遅かったと思う」と話してきたら、「どうしてそう感じた?」「次はどうしたい?」と深めていけばいい。
でも子どもが黙っているなら、その沈黙は「まだ整理できていない」のサインです。そのときは待つことが最善の声かけです。
④ 「次の1アクション」だけ話す
最後に、次の練習に向けての話をするなら、「次は〇〇を意識してみよう」という1つだけにしましょう。
「次はエラーしないように」「もっと声を出せ」「全部ちゃんとやれ」——複数の課題を並べると、子どもの頭の中が混乱します。
1つだけ。それも「しないように」ではなく「してみよう」という前向きな言葉で。
「次は一歩目を出すことだけ意識してみよう」
これだけで、次の練習への向き合い方が変わります。
試合後の「空気」が子どもの野球人生を作る
ぼくがいろんな親子を見てきて感じるのは、試合後の「空気」が子どもの野球への気持ちを育てるということです。
試合に負けたあと、車の中が沈黙で重くなる。家に帰ってもお父さんが口を利いてくれない。そういう経験が積み重なると、子どもは「ミスをすることが怖い」だけでなく「野球をすることが怖い」になっていきます。
逆に、試合に負けてもご飯を食べながら笑顔で話せる家庭の子は、翌日の練習への切り替えが早い。
試合後の声かけを変えることは、「上手くなるための練習」であると同時に、「野球を好きであり続けるための土台」を作ることでもあります。
まとめ
試合後の声かけ、4つのポイント:プロセスを認める、具体的によかった動きを伝える、ミスの振り返りは子どもから、次の1アクションだけ話す。
難しく考える必要はありません。「よく頑張ったね、見てたよ」と言える親がそばにいるだけで、子どもの野球は変わります。
うえちコーチについて
元甲子園球児(犠打9・大会記録保持)/内野守備パーソナルコーチ・スポーツメンタルトレーナー/現役消防士・3児のパパ。100人以上の選手と向き合ってきた現場経験から「すぐに実践できて、今日から変わる1つ」をお届けします。